家計管理

最低賃金1176円へ、月給18万円で足りる?


※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。制度・金額の最終確認日:2026-07-31。

2026年7月28日、中央最低賃金審議会が今年度の引き上げ目安を答申しました。全国加重平均で55円増の1,176円。ニュースの見出しはここまでですが、家計の話としては、ここからが本題です。

「うちは月給制だから最低賃金は関係ない」と思っている方が、実はいちばん確認したほうがいい立場かもしれません。

先に結論:月給制の会社員にも、最低賃金は適用されます

最低賃金は、パートやアルバイトだけの制度ではありません。厚生労働省は、地域別最低賃金について「産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用されます」と明記しています。正社員も、契約社員も、対象です。

問題は、月給制の人は自分の時給を知らないことです。時給を知らなければ、割れているかどうかも分からない。 そして月給を時給に直すときには、多くの人が思っているより厳しいルールが使われます。

先に数字だけ出しておきます。年間休日120日・1日8時間の会社で、月給18万円のうち通勤手当1万円・家族手当1万円が含まれている場合、最低賃金の判定に使われる時給は約980円です。2025年度の全国最低額(1,023円)を、すでに下回っています。

目安55円の中身:今年は地方の上げ幅が都市部を上回った

まず、答申された数字を正確に押さえます。

厚生労働省の発表によると、2026年度(令和8年度)の目安は、都道府県をA・B・Cの3ランクに分けたうえで、Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円。Aランクは6都府県、Bランクは28道府県、Cランクは13県です。仮に全都道府県が目安どおりに引き上げた場合、全国加重平均は1,176円、上昇額55円、引き上げ率4.9%になります。

注目すべきは、Aランク(54円)よりB・Cランク(56円)のほうが上げ幅が大きい点です。経済力の高い都市部よりも、地方の引き上げ額が上回る形になっています。地域間の差を縮める方向に振れた、という読み方ができます。

前年度と比べると、伸びは鈍化しています。2025年度の実績は全国加重平均1,121円で、前年度の1,055円から66円の引き上げ。これは目安制度が始まった1978年度以降で最高の上げ幅でした。今年の55円は、それを下回ります。物価上昇が続く一方で、上昇率そのものは昨年より落ち着いたことが背景にあると報じられています。

なお、この目安はあくまで目安です。実際の金額は、各都道府県の地方最低賃金審議会が調査審議して答申し、都道府県労働局長が決定します。目安を上回る県が出ることも珍しくありません。

月給を時給に直す計算式

ここからが実務です。月給制の人が自分の時給を出す式は、次のとおりです。

最低賃金の判定に使う時給 =(月給 − 除外される手当)÷ 1か月あたりの平均所定労働時間

1か月あたりの平均所定労働時間は、こう出します。

(365日 − 年間所定休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月

年間休日120日・1日8時間なら、(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 約163.3時間。年間休日105日・1日8時間なら、(365 − 105)× 8 ÷ 12 = 約173.3時間です。休みが少ない会社ほど分母が大きくなり、同じ月給でも時給は下がります。

ここで多くの人がつまずくのが、分子のほうです。

計算に入る賃金と、入らない賃金

厚生労働省は、最低賃金の対象になるのは「毎月支払われる基本的な賃金」だとしたうえで、次の6つを除外すると示しています。

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 所定労働時間を超える労働に対する賃金(時間外割増賃金など)
  4. 所定労働日以外の労働に対する賃金(休日割増賃金など)
  5. 深夜割増賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分
  6. 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

つまり、手取りを支えてくれている手当ほど、判定からは外されるという構造です。ボーナスも残業代も通勤手当も家族手当も、最低賃金の計算では存在しないものとして扱われます。給与明細を見て「18万円もらっている」と思っていても、判定に使われるのは基本給と一部の手当だけ、ということが起こります。

働き方によって、この制度がどう効くかは変わります。

最低賃金 | 2026年度改定

働き方別・最低賃金の効き方

同じ「働いて収入を得る」でも、守られ方はかなり違います

最低賃金の適用判定に使う金額10月以降の改定の影響
時給制のパート・アルバイト 雇用契約 適用される 契約上の時給がそのまま 発効日以降の時給に反映
月給制の正社員・契約社員 雇用契約 適用される 手当を除いて時給換算 自分では気づきにくい
業務委託・請負での副業 雇用契約ではない × 労働者でなければ対象外 × 報酬額に法定の下限なし × 改定の影響を受けない
  • ※月給制の時給換算では、通勤手当・家族手当・精皆勤手当・残業代・賞与などを除いて計算します
  • ※業務委託でも、働き方の実態から労働者と判断される場合は最低賃金が適用されることがあります
  • ※派遣で働く場合は、派遣先の都道府県の最低賃金が適用されます

資産化計画

実額で確かめる:月給18万円のケース

冒頭の数字を、順に追います。

例として、年間所定休日120日・1日8時間、月給18万円(内訳:基本給16万円、通勤手当1万円、家族手当1万円)の会社員を考えます。実在の誰かではなく、計算を見せるためのモデルです。

  • 1か月の平均所定労働時間:(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 約163.3時間
  • 判定に使う賃金:18万円 − 通勤手当1万円 − 家族手当1万円 = 16万円
  • 判定に使う時給:16万円 ÷ 163.3時間 = 約980円

2025年度時点で、最低賃金の全国最低額は1,023円です。この人はすでに下回っている可能性が高い、ということになります。年間休日が105日の会社(平均所定労働時間 約173.3時間)なら、16万円 ÷ 173.3時間 = 約923円まで下がります。

逆算すると、必要な金額が見えます。年間休日120日・1日8時間(163.3時間)の場合、手当を除いた賃金として最低限必要な額は、おおよそ次のとおりです。

  • 時給1,023円(2025年度の全国最低額)→ 約16.7万円
  • 時給1,079円(そこに目安の56円を足した水準)→ 約17.6万円
  • 時給1,176円(2026年度の目安・全国平均)→ 約19.2万円
  • 時給1,280円(東京都1,226円に目安の54円を足した水準)→ 約20.9万円

「月給20万円なら安心」とは、もう言えない水準に来ています。 とくに東京都で年間休日105日の会社なら、必要額は約22.2万円(1,280円 × 173.3時間)まで上がります。

いつから変わるのか:10月とは限りません

ここも誤解が多いところです。改定された最低賃金は、答申されたその日から効くわけではありません。

2025年度の実績を見ると、各都道府県の改定額は「令和7年10月1日から令和8年3月31日までの間に順次発効」とされていました。東京都は2025年10月3日発効で1,226円になっています。一方で、引き上げ幅が大きい年は発効日が後ろにずれる県も出ます。自分の県がいつからなのかは、県ごとに確認するしかありません。

2026年度の各都道府県の金額と発効日は、これから8月以降に地方審議会で決まります。今の段階で確定しているのは「目安」だけです。数字を知りたい方は、9月ごろに厚生労働省や都道府県労働局の発表を確認するのが確実です。

割れていたら、どうなるのか

もし計算した時給が、自分の都道府県の最低賃金を下回っていたら。制度上の扱いははっきりしています。

最低賃金法では、最低賃金に達しない賃金を定めた労働契約は「その部分については無効」とされ、無効になった部分は「最低賃金と同様の定をしたものとみなす」と定められています。つまり、契約でいくらと書いてあっても、法律上は最低賃金額で契約したことになります。

その結果、最低賃金未満しか支払われていなかった場合、使用者は差額を支払わなければなりません。 地域別最低賃金額以上を支払わない場合には、50万円以下の罰金という罰則も定められています。

ただし、計算の前提(年間所定休日数、1日の所定労働時間、どの手当が固定的な手当にあたるか)は会社の就業規則によって変わります。自分で計算して「割れているかもしれない」と思った段階では、まだ確定ではありません。就業規則や労働条件通知書を確認したうえで、判断がつかなければ都道府県労働局や労働基準監督署に相談するのが順序としては安全です。

上がっても、手取りが同じだけ増えるとは限らない

もうひとつ、家計側の話を。

時給が55円上がったとして、月160時間働く人なら額面で月8,800円、年間で約10万5,600円の増加です。ただし、この増加分がそのまま手取りになるわけではありません。社会保険料と所得税・住民税が引かれるため、実際に増えるのはおおむねその7割前後になります(税率や社会保険の加入状況によって変わります)。

さらに、扶養の範囲で働いている場合は、時給が上がったぶん働ける時間が減る、という別の問題が起きます。2026年10月には社会保険の加入要件からいわゆる「106万円の壁」の賃金要件が撤廃される予定で、時給上昇と制度改正が同じ時期に重なります。この点は106万円の壁撤廃で手取りはいくら減る?で試算しているので、パート勤務の配偶者がいる世帯は合わせて読んでみてください。

今日からできる具体アクション

  1. 給与明細と労働条件通知書を出す。 基本給、各手当の名称と金額、年間所定休日数、1日の所定労働時間の4点を確認します。
  2. 上の式で自分の時給を出す。 (月給 − 通勤手当 − 家族手当 − 精皆勤手当)÷ 平均所定労働時間。電卓で3分です。
  3. 自分の都道府県の現在の最低賃金と比べる。 厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確認できます。
  4. 9月に、改定後の金額をもう一度見る。 発効日は県ごとに違います。カレンダーに入れておくと確実です。
  5. 残業代や手当を含めた「実感としての時給」も出しておく。 通勤時間や持ち帰り仕事まで含めた実質の時給は、あなたの実質時給計算機で計算できます。転職や副業を考えるときの比較の土台になります。

そのうえで、時給が上がっても手取りが思ったほど増えないなら、出ていくお金の側を見るしかありません。収入は会社が決めますが、固定費は自分で決められます。 給与明細を見返したついでに、毎月の支出も一度可視化しておくと、55円の意味が測りやすくなります。口座やカードをつないで自動で集計したい人向けの定番はこちらです。

よくある質問

Q. 年俸制でも最低賃金は適用されますか。

適用されます。地域別最低賃金は産業や職種にかかわりなくすべての労働者に適用されるため、賃金の支払い形態は関係ありません。年俸制の場合も、1か月あたりの金額に直したうえで、除外される手当を差し引いて時給換算します。なお、年俸に含まれる賞与相当分の扱いは契約によって異なるため、判断に迷う場合は労働基準監督署に確認してください。

Q. 試用期間中は最低賃金より低くてもいいのですか。

原則として、試用期間中も地域別最低賃金は適用されます。例外として最低賃金法第7条の「減額の特例許可」という制度があり、試の使用期間中の人などについて、使用者が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限って減額が認められます。減額できる率の上限は20%で、許可には合理性の要件があります。会社の判断だけで下げてよいわけではなく、許可が前提です。

Q. 派遣で働いている場合、どちらの県の最低賃金が適用されますか。

派遣先の最低賃金が適用されます。厚生労働省も「派遣労働者には、派遣先の最低賃金が適用されます」と明記しています。登録している派遣会社の所在地ではなく、実際に働いている事業場のある都道府県で判断します。

Q. 副業のクラウドソーシングの報酬が時給換算で500円でした。違法ですか。

業務委託や請負の契約で、実態としても労働者にあたらない場合は、最低賃金の適用対象外です。したがって報酬額そのものが違法になるわけではありません。ただし、指揮命令を受けて時間を拘束されているなど働き方の実態が労働者と判断される場合には、契約書の名称にかかわらず最低賃金が適用されることがあります。

Q. 目安どおりに全県が上がると決まったのですか。

決まっていません。今回答申されたのは中央最低賃金審議会の「目安」で、実際の金額は各都道府県の地方最低賃金審議会の答申を受けて都道府県労働局長が決定します。過去には目安を上回る改定をした県も複数あります。

あわせて読みたい

参考情報

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。