月末退職と29日退職、得なのはどちらか
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9月30日に辞めるか、9月29日に辞めるか。1日の違いで、9月分の社会保険料が引かれるかどうかが変わります。ただし「1日早めれば1か月分得をする」とは限りません。会社の保険から抜けた日から、国民年金と国民健康保険が自分の負担になるからです。
この記事で分かることは3つです。
- 退職日の1日差で保険料の扱いが変わる仕組み
- 早めた側で新しく発生する負担(国民年金は月17,920円)
- 退職日を決める前に確かめる3点
疑問の多い順に、日付・金額・手続きの期限を分けて答えます。制度の数値は最終確認日2026年9月12日時点のものです。
1日ずらすと保険料はなぜ止まるのか
健康保険と厚生年金の保険料は、資格を失った日が属する月の「前月分」まで発生します。そして資格を失う日は、退職日の翌日です。
9月30日に退職すると、資格喪失日は10月1日になります。10月の前月は9月なので、9月分の保険料が発生します。
9月29日に退職すると、資格喪失日は9月30日です。9月の前月は8月なので、9月分は発生せず、8月分で止まります。
日付が1日違うだけで、会社の保険に「9月がまるごと入るか、入らないか」が切り替わります。 月末が土日でも考え方は同じで、暦の上の退職日で判断します。
9月分の給与から2か月分引かれる理由
月末に退職すると、最後の給与から保険料が2か月分引かれることがあります。計算の誤りではなく、控除のタイミングによるものです。
多くの会社は、ある月の保険料を翌月に支払う給与から差し引きます。8月分の保険料は9月の給与から、9月分は10月の給与から、という流れです。
9月30日に退職すると、10月に支払う給与がありません。そこで最後の給与で8月分と9月分をまとめて精算する会社があります。金額は普段の2倍近くになるため、最後の手取りを見て驚く人が出ます。
退職前の資金計画では、最後の給与を「いつもと同じ額」で数えないでください。 控除の方式は会社ごとに違うため、退職の申し出をしたときに給与担当へ確認するのが確実です。
29日に辞めた月の保険はどうなるのか
9月29日に退職すると、9月30日から公的医療保険と年金を自分で手当てすることになります。空白の1日も認められません。
年金は国民年金の第1号被保険者になります。保険料は定額で、令和8年度(2026年4月分から2027年3月分)は月17,920円です。9月30日に資格を得るため、9月分から納付の対象になります。
医療保険は次の3つから選びます。
- 退職した会社の健康保険を続ける「任意継続」
- 住んでいる市区町村の国民健康保険
- 配偶者など家族の健康保険の扶養に入る
どれを選んでも、9月分の保険料は自分か扶養してくれる家族の側で発生します。会社の保険料が止まった分だけ、支出がそのまま消えるわけではありません。
浮く額と増える額はどちらが大きいか
金額の向きは、退職時の給与水準と住んでいる自治体で変わります。会社員のあいだの負担が大きい人ほど、1日早めた効果は出やすくなります。
架空の例として、標準報酬月額30万円の会社員を考えます。厚生年金の保険料率は18.3%で固定されており、本人と会社が半分ずつ負担します。本人負担は30万円の9.15%で、月27,450円です。
これに健康保険の本人負担が加わります。健康保険の料率は加入している健康保険と都道府県で違うため、全員に当てはまる金額はありません。自分の額は給与明細の控除欄にある健康保険料と厚生年金保険料の合計で確かめてください。
一方、自分で払う側は国民年金の17,920円に国民健康保険料が加わります。国民健康保険料は市区町村と前年の所得で決まるため、全国共通の金額がありません。市区町村の窓口やサイトで試算すると、自分のケースの数字が出ます。
前年の所得が高い人は国民健康保険料も高く出るため、1日早めた効果が消えることがあります。 逆に扶養に入れる人は、医療保険の負担がゼロになります。差が大きく出るのはこのケースです。
将来の年金は1か月分減るのか
減るのは厚生年金の部分です。基礎年金の部分は、国民年金として納めれば月数に反映されます。
9月29日に退職すると、9月は厚生年金の被保険者ではない月になります。厚生年金は加入していた月数と、そのときの報酬で受給額が決まる仕組みです。9月が抜けた分、報酬に比例する部分は増えません。
9月分の国民年金を納めれば、老齢基礎年金の受給資格期間と月数には9月が入ります。納めずに放置すると、基礎年金の側も1か月分減ります。保険料を止めたつもりで未納にすると、削るはずのなかった部分まで削ることになります。
抜けるのは1か月分なので、受給額への影響は小さく収まります。それでも、「早く辞めれば得しかない」という説明は正しくありません。
任意継続と国民健康保険はどちらが安いのか
比べるべきは保険料と、扶養している家族の人数です。任意継続を選べる期間は20日しかありません。
任意継続は、退職前の健康保険を最長2年間続ける制度です。全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合、申請は退職日の翌日から20日以内です。20日目が土日や祝日なら翌営業日まで認められます。
保険料は在職中と違い、全額が自己負担になります。会社が半分払っていた分が乗るため、単純に倍近くになります。ただし計算の土台となる標準報酬月額には上限があり、協会けんぽの令和8年度の上限は32万円です。給与が高かった人は、この上限で頭打ちになります。
国民健康保険は前年の所得で決まるため、退職した年は高く、翌年は下がる動きになります。子どもを扶養している人は、国民健康保険では人数分の均等割が加わる点も効いてきます。
20日を過ぎると任意継続は選べなくなり、国民健康保険か扶養しか残りません。 退職日を決める段階で、両方の金額を先に調べておいてください。
住民税はいつどうやって払うのか
退職した月によって、残りの住民税の扱いが変わります。9月退職は「自分で納める」側に回ります。
住民税は前年の所得に対する税を、6月から翌年5月までの12回で給与から引く仕組みです。9月に退職すると、10月から翌年5月までの分が未徴収のまま残ります。
この残りは、市区町村から送られる納付書で自分で納めます。最後の給与や退職金からまとめて引く「一括徴収」を選べる会社もあります。
収入が止まった時期に、前年の所得に対する住民税の請求が届く点が退職後の家計で一番きついところです。 残額を先に計算し、生活費とは別に置いておくと支払いで慌てません。
失業給付は最短でいつ入るのか
自己都合で辞めた場合、受給資格が決まってから7日の待期期間を経て、さらに原則1か月の給付制限があります。令和7年4月1日以降に離職した人が対象です。
令和7年3月31日以前に離職した場合は原則2か月でした。制限が1か月に短くなった点は、退職の時期を考えるときに効きます。
例外もあります。退職日からさかのぼって5年のうちに、正当な理由のない自己都合退職で2回以上受給資格の決定を受けた場合は3か月です。重大な理由で解雇された場合も3か月になります。
一方、離職期間中や離職日前1年以内に、再就職に役立つ教育訓練を受けた場合は給付制限が解除されます。2025年4月1日以降に受講を始めたものが対象です。7日の待期のあとすぐに基本手当を受け取れるかどうかは、教育訓練を受けたかで変わります。
退職日を決める前に確かめる3つ
退職願を出す前に、次の3点を数字で押さえてください。1日ずらす判断は、この3つがそろってから決めるものです。
- 最後の給与で保険料が何か月分引かれるか。給与担当に控除の方式を聞きます。2か月分になるなら、その月の生活費を先に確保します
- 任意継続と国民健康保険の保険料。任意継続の保険料は勤務先の健康保険に、国民健康保険料は市区町村の窓口に試算を頼みます。扶養に入れるなら、その条件も合わせて確認します
- 10月から翌年5月までの住民税の残額。給与明細の住民税の月額に残りの月数を掛けると、おおよその総額が出ます
年内に再就職しない場合、給与から引かれていた所得税が払いすぎになることがあります。年末調整を受けられないためで、翌年の確定申告で精算します。自分に申告の必要があるかは確定申告3問診断で目安が出ます。
ここまでの3点は自分でも調べられます。一方で、退職金の受け取り方や医療保険の選択は、単独では判断できません。収入が止まる数か月の生活費と並べたほうが、早く結論が出ます。
保険料の最終的な金額は、加入している健康保険と住んでいる市区町村で決まります。日付の判断を終えたら、勤務先の給与担当と市区町村の窓口で自分の数字を確かめてください。
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