予定利率が上がった今、古い保険は解約すべきか
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生命保険の「予定利率」が各社で上がっています。住友生命は2026年7月1日以降の契約から、一時払終身保険の予定利率を1.75%から2.25%へ引き上げました。
先に結論を書きます。**予定利率が上がっても、いま入っている保険の保険料は1円も下がりません。**予定利率は契約した時点の数字で固定されるからです。解約して入り直すと得になるのは、条件がそろった一部の契約だけです。
この記事では、架空のモデル世帯を1つ置き、手元の3つの契約を1つずつ判断していきます。数字は2026年9月27日時点で各社の公表資料を確認したものです。
モデル世帯の3つの契約
例として、次の世帯を考えます。実在の人物ではなく、判断の流れを見せるための架空の設定です。
- 夫:38歳の会社員。妻と5歳の子の3人家族
- 契約A:28歳で入った終身保険(月払い・死亡保険金500万円)
- 契約B:親が掛けてくれた、1990年代前半に始まった終身保険
- 契約C:30歳で入った掛け捨ての定期保険(子の独立までの死亡保障)
夫は秋のニュースで「予定利率が上がって保険料が下がる」と知りました。3つとも解約して入り直せば安くなるのでは、と考えています。この考えのまま動くと、いちばん価値のある契約Bを手放すおそれがあります。
そもそも予定利率とは何か
予定利率は、保険会社が「集めた保険料をこのくらいの利回りで運用できる」と見込む数字です。保険会社はこの見込みの分だけ、保険料をあらかじめ割り引いて計算しています。
そのため予定利率が上がると、同じ保障でも保険料は安くなります。貯蓄性の高い保険ほど、影響が出やすい仕組みです。
各社の公表例を並べると、次のとおりです。
| 会社・商品 | 改定前 | 改定後 | 適用 |
|---|---|---|---|
| 日本生命・終身保険 | 0.25% | 0.40% | 2025年1月の新規契約から |
| 日本生命・年金保険 | 0.60% | 1.00% | 同上 |
| 住友生命・一時払終身保険 | 1.75% | 2.25% | 2026年7月1日以降の契約日から |
住友生命の発表では、60歳男性が保険金1,000万円の一時払終身に入る場合、保険料は約9.3%下がります。一方、日本生命の月払い終身保険の例では、30歳女性・保険金500万円で月14,990円から14,815円になりました。下がり幅は1.2%で、月175円です。
同じ「予定利率アップ」でも、一時払いと月払いでは効き方がまったく違います。
契約Aの判断 10年前の月払い終身
契約Aは、解約して入り直すと損になりやすい契約です。理由は3つあります。
1. 新しい保険料は38歳で計算される 入り直すと、保険料は加入時の年齢で決まります。28歳で決めた保険料が、38歳の年齢で計算し直されます。予定利率による値下がりが月払いで1.2%程度なら、年齢が上がる分の値上がりを打ち消せるとは限りません。
2. 解約返戻金が払った額を下回りやすい 月払いの終身保険は、払込期間の途中で解約すると、払った保険料より少ない額しか戻らないことがあります。契約Aは10年目なので、まさにこの期間にあたる可能性があります。
3. 健康状態しだいで入り直せない 新しい契約には、あらためて健康状態の告知が必要です。10年の間に通院歴ができていれば、同じ条件では入れないこともあります。
夫がやることは1つです。**保険会社に「いま解約したら返戻金はいくらか」と、「同じ保障で今の年齢の保険料はいくらか」の2つを出してもらい、並べて比べます。**感覚ではなく、この2つの数字で決めます。
契約Bの判断 親が掛けた古い終身
契約Bは、解約を最も慎重に考えるべき契約です。過去には、今より予定利率が高かった時期があります。その時期の貯蓄性の保険は、今でも有利な条件が残っていることがあります。
**一度解約すると、同じ条件にはもう戻れません。**今の商品で予定利率が上がったといっても、昔の高い予定利率を上回るとは限らないからです。
保険の専門メディアでも、返戻率がすでに100%を超える既契約は、乗り換えより「維持・減額・払済」が家計に合う場合がある、と整理されています。
保険料の負担が重いだけなら、解約以外の道があります。生命保険文化センターの説明では、主な方法は次の2つです。
- 払済保険:保険料の払込みをやめ、その時点の解約返戻金をもとに保障額の小さい保険に切り替える。特約は原則なくなる
- 延長保険:保険料の払込みをやめ、同じ死亡保障額の定期保険に切り替える。保険期間は短くなることがある
契約Bでは、まず保険証券で契約年月日と予定利率を確認します。証券に書いていなければ、保険会社のコールセンターで聞けます。
契約Cの判断 掛け捨ての定期保険
契約Cは、予定利率より「保障額が今の家計に合っているか」で判断する契約です。掛け捨ての定期保険は貯蓄部分がほとんどないため、解約しても返戻金はほぼありません。解約で失うものが少ない分、見直しの自由度は3つの中で最も高くなります。
夫の場合、子が独立するまでに必要な生活費と教育費から、死亡保障の必要額を出し直します。遺族年金で入るお金を差し引くと、必要額が加入時より小さくなっていることもあります。
注意点は1つです。**新しい保険の契約が成立する前に、古い保険を解約しないこと。**先に解約すると、健康状態の告知で新しい保険に入れなかったとき、無保険の期間ができてしまいます。
解約すると税金がかかる場合
契約者と受取人が同じ本人の契約では、解約返戻金が払った保険料より多いと、差額は一時所得として所得税の対象になります。国税庁の説明による計算式は次のとおりです。
(受け取った解約返戻金 − 払い込んだ保険料 − 特別控除50万円)× 2分の1 = 課税の対象になる額
例として、払込保険料500万円の一時払終身を解約し、580万円戻ったとします。利益は80万円です。特別控除50万円を引くと30万円、その2分の1の15万円が課税の対象になります。利益が50万円以下なら、一時所得の税金はかかりません。
契約Bのように古い契約で利益が大きい場合は、税金まで入れて手取りを計算します。なお、他の一時所得と合算して判断するため、同じ年に別の一時所得がある人は合計額で考えます。
モデル世帯の結論
3つの契約を判断すると、答えは次のようになりました。
| 契約 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| A 月払い終身(10年目) | 返戻金と新しい見積もりを並べてから決める | 年齢が上がる分と元本割れで、入り直しが損になりやすい |
| B 親が掛けた古い終身 | 原則は継続。重ければ払済・延長を検討 | 昔の高い予定利率は、解約すると取り戻せない |
| C 掛け捨ての定期 | 保障額を出し直して見直す | 返戻金がほぼなく、失うものが少ない |
「予定利率が上がった=全部入り直す」ではなく、契約ごとに失うものを数えるのが答えです。
相談するときは、保険証券と、保険会社から毎年届く「ご契約内容のお知らせ」を持っていきます。解約返戻金の額が書かれていることが多く、話が早く進みます。
今週やること
- 家にある保険証券をすべて出し、契約年月日と払込方法(月払い・一時払い)を書き出す
- 貯蓄性の契約は、保険会社に解約返戻金の額を問い合わせる
- 入り直しを考える契約は、今の年齢での見積もりを取り、返戻金と並べる
- 新しい保険の契約が成立するまで、古い保険は解約しない
あわせて読みたい
参考情報
- 住友生命「一時払終身保険の保険料率の改定について」(2026年6月25日)
- 日本経済新聞「日本生命、予定利率40年ぶり上げ 年金保険や終身保険で」(2024年11月21日)
- 国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
- 生命保険文化センター「保険料の払込みが困難になったときは?」
最終確認日:2026-09-27。予定利率や保険料は商品・会社・時期で変わります。最新の条件は各保険会社の公式サイトでご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。